牡蠣フライ製造ラインでの高難易作業を自動化するAI技術活用
~業界の共通課題を解決し省力化を実現、海外拡販のための土台を築く~

クニヒロ株式会社

採択企業

クニヒロ株式会社
設立:1970年7月(創業:1957年9月)
代表者:代表取締役社長 新谷 真寿美
本社:広島県尾道市東尾道15-13
資本金:9000万円

採択事業

牡蠣フライ製造ラインでの高難易作業を自動化するAI技術活用
~業界の共通課題を解決し省力化を実現、海外拡販のための土台を築く~

半冷凍牡蠣フライをトレイへ移送するのは難易度が高く、現状人が行うことしかできず、業界の課題となっている。この作業を最新のロボットハンドとAIで自動化し、人手不足解消、労働生産性改善を実現し、海外拡販も見据えた業界全体の活性化に繋げる。

interview

導入の経緯

牡蠣加工業界では人手不足が慢性化しています。人の手でないとできない作業が多い、柔らかくて不定形で不定量な牡蠣を定型品にしなければいけない。その工程の多くは、難易度が高く、体力的にも大変で、なかなか年配の方ではできない作業です。
とはいえ、これから先人口減少で労働力不足はもう目に見えてるし、年々やっぱり厳しくなっているのが本当にもう目の前まで来てる段階で、今自動化に向けてロボットを導入しないと、これから先企業側も生き残っていけるところとそうでないところがはっきり明確になっていくと思います。そういったことを考えて、今だからこそ、設備投資をやるべきではないかなということで進めました。

実施した内容

流れてくる半解凍の牡蠣フライを繰り返しトレイに運ぶ工程を、人の手からロボットへ変えました。カメラで対象の牡蠣フライを認識し、ロボットが位置を確認し、掴みにいくシステムです。
大手さんだったらいろいろな人材がいると思うのですが、我々中小企業は最初どうしたらいいのかも分からない。成功事例を見ながら省人化を考えようというセミナーが広島県で2カ月に1回ほど開催されており、まずはそこに足繁く通いました。
その中で、軟体物を掴むロボットハンドがまだ世の中にない。それを考えようというテーマがあり、弊社の牡蠣フライを把持したいという想いがあったため、ちょうど相まってプロジェクトが始まりました。
一番最初は市販されているアメリカ製のソフトロボハンドでテストしたんですけども、掴むことはできるんですが、高速移動の時にツメとツメの間から商品が吹き飛んでしまいました。そこで、包み込むような形のハンドの設計をしていただいて、実際に我々がパン粉をつけた商品で繰り返しテストをしました。綺麗な衣を保持したまま運ぶことに苦労しましたが、これだったらいけるのではないかと導入を決めました。

結果と改善点

人が行っている場合は、製造ライン1ラインにつき10名の人員配置で作業しており、10名で1時間あたり1万5000個を処理していました。ロボットを導入後、流量を3分の2にし、5名の人員配置で1時間あたり1万個の処理になり、1人あたりの生産性は33%向上いたしました。
改善点は、前工程との関係です。前工程・後工程も諦めず自動化を進めていく。そして、工場にはまだ5ライン牡蠣フライ製造ラインがありますので、今回のシステムの横展開をしたいと考えています。また、現在一直で稼働しているのを二直化し、生産量を増やしていきます。
今回導入したロボットハンドが想像以上の性能を発揮しており、テストでは生牡蠣も掴むことができました。今後はより柔らかいものの把持にもトライしていきたいと考えています。

今後の展望

牡蠣フライのフライ文化はアジアでは親しみがあると思うんですが、ヨーロッパやアメリカではまだまだないので、そういった日本の食文化、牡蠣という商品だけど、日本で食べる食べ方提案というか、食文化を世界に広げていきたいと考えています。
アジアへの輸出はもう30年近く前からしてたのですが、生食が主流のヨーロッパやアメリカへ。EUはEUHACCP、アメリカはFDAを取得しないと二枚貝の輸出はできないのですが、国が5兆円輸出するための「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を掲げてから広島県も牡蠣を輸出しようということで、5年前から取り組んでおりまして、昨年には冷凍殻付き牡蠣工程でEUHACCPを取得、今後牡蠣フライ製造工程でも取得する予定です。
牡蠣フライは世界中に通用する食べ物だと思っていますので、今後も自動化を進めて、省人化と生産量の向上に力を入れていきたいと考えています。

クニヒロ株式会社
代表取締役社長 新谷 真寿美さま
執行役員 製造本部 本部長 田中 克幸さま