天候等による圃場での農産物廃棄を防ぐAI生産システム
~廃棄情報から、生産者と飲食店をつなぐAI開発~

株式会社佐勇

採択企業

株式会社佐勇
設立:1977年8月(創業:1950年5月)
代表者:代表取締役 佐藤 広志
本社:東京都港区六本木7-2-5
資本金:8800万円

採択事業

天候等による圃場での農産物廃棄を防ぐAI生産システム
~廃棄情報から、生産者と飲食店をつなぐAI開発~

食品ロス問題解決に向けて、AIシステムによる天候等による圃場での廃棄予測を行い、農産物に影響が出る前に早期調達することにより廃棄を防ぐ。また、廃棄前に未然に調達した農産物から販売可能な製品を探索するとともに、製造計画を策定して生産可否の判断を行う。

interview

導入の経緯

「あるもの食べようプロジェクト」というプロジェクトを、約2年ほど前に発足しました。一番最初は、災害備蓄品を作りたいというのが大きなテーマでした。心が貧しい時に美味しいものを届ける。それも、現地でとれていて、なおかつ商品になっていない食材を活用して、加工して、お返しをして、備蓄をしてもらう。もちろん、使われないことが1番良いので、その場合は学校給食などで召し上がっていただき循環を図る。といったことからスタートしました。そこからさらに広げて、より食ロス食材を有効活用したいと考えました。
食ロスの食材は、今公表されている一度流通にのったものに加えて、それと同じくらいの量で流通にのらないまま本当は食べられるのに捨てられてしまっている食材がたくさんあり、これを価値に変えていく。ただ毎日いろんなところで起きているものをタイムリーに、情報を仕入れて、実際に工場を動かすための計画に反映させていくことは、なかなか大変で、極力自動化を図りたく、今回AIシステムの導入を決めました。

実施した内容

食材ロスがどういったところに起きていたのか、そしてこれから起きそうなのかというのを予測をして、それを元に既存のレシピからどういったものを作れるかをリコメンドして、例えば既存の計画に入れ込めるか否かというのを判断するシステムを構築しました。
導入した羽田工場は、セントラルキッチンのようなイメージでいろいろな機材が点在していて、商品ごとに使う機材があったり、使わない機材があったりしますので、この稼働率を高め、空き枠を埋めていくという作業を省人化する。「これはちょっと頭でやり切れないよね」というのは事前から話がありましたので、システム画面で1日のガントチャート、タイムラインを見た時に、これであれば組み替えも簡単だねとなりました。
誰でも使える機能なんですが、実際起きた食ロスの量とか品種を登録してデータベースとして取り溜めていく必要はあります。農家さんや漁協さん、そして食材を扱っている商社さんなどを回って、こういった想いにご賛同いただける方から情報をいただいたりというのは専門のチームで動いております。

結果と改善点

システム導入後、計画立案作業に時間単価でいくと、約3倍ほどの成果が出ております。
要因として、まず単価の部分では、今まで管理者クラスのいろいろな情報が頭に入ってる者を作業に充てていたんですが、今回はシステムに全てデータが入っていますので、管理者以外の立場の人間でも簡単に作業できます。
作業にかかる時間は、元々データ作業をEXCELベースで見ながら編集をしていたのですが、10時間以上1ヶ月の計画を立てるのにかかっておりました。導入後はガントチャートを見ながら計画を確定していくので、そこの時間は大幅に短縮、1日1時間ぐらいの作業で見直しというのが可能になりました。ロスの予測をするのにも、人間の頭で予測を立てて、例えば台風が来ているからこういうロスが生まれるだろうと予測して、そして、そこから作業レシピを考えて計画にするという流れが、データさえあれば自動化されていくので、そこの時間も削減されています。
改善点としては、同じ野菜でも、いろんな前提の条件が変わる。固さが違う旬が違うとなってくると、適正なレシピというのはその都度変わってくるので、そういったこれまで職人が判断していたところをどうやって定量化してシステムに落としていくかという部分がこれからの課題でもあります。

今後の展望

今回のシステムで、食ロス食材を使った製造のスキームが整えば、これを拡張して別の工場の増設・新設に役立てていきたいと考えています。消費者ニーズではなく、今ある食材から「食材ありきの製造」をすることをより広げていきます。また、AIが考えるので人が思いつかないようなレシピを提案するというところに関しては、かなり力を発揮すると思います。例えば、ほうれん草が採れたとして、これまでだったら胡麻和えにしていたところを、シェフや栄養士のレシピをレパートリーとして持っておく、幅を持っておくと、同じ食材からスタートしても、出口までのストーリーをつけやすくなると考えています。

株式会社佐勇
製造部門 羽田工場 工場長 小野田 翔吾さま