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事例11 国産マダラ調達への切替を通じた売上及び販路拡大

本事例は「食品原材料調達安定化対策事業(農林水産省)」によるものです。
同事業のその他の事例はこちらの一覧から閲覧できます。


株式会社青海商事(青森県)

事業:鮮魚及び水産食材の加工・販売
従業員:5名
価格高騰の影響を受けていることが証明されている食品原材料:たら類

青海商事

青森県産マダラの販売促進により、原材料コスト増加に対抗

株式会社青海商事は、青森県の津軽地方、日本海西岸の港町を拠点に地元密着で鮮魚加工業を営んでいます。主な販売品目はマダラ、サケ、サバといった切り身や冷凍ヤリイカなど。販路としては、青森県内のスーパーマーケットや病院施設をはじめ、東京の豊洲市場にも多くの商品を出荷しています。

青海商事が取り扱う様々な魚種の中でも、特に多くの割合を占めるのがマダラです。淡白な味わいで調理しやすいこともあって消費者のニーズが高く、マダラの切り身は売上の60%を超える主力商品となっています。

これまで同社では、ロシア産のマダラを調達し、多くの需要に応えてきました。しかし、ウクライナ情勢の影響などから仕入れ価格が高騰し、供給がストップする可能性までも浮上。そこで同社では、新たな原材料として青森県産マダラに着目しました。

青森県では近年、マダラの漁獲量が増えている上、現状であればロシア産と同等もしくはそれ以下の価格で調達できるため、量と価格の両面で青森県産マダラは非常に有望だといえます。しかしその一方で、調達の安定性・継続性という面に関しては若干の懸念が残ることも事実。日本海は天候が不安定なため、出漁できない日が1週間近く続くことがあり、時期によって漁獲量が大きく上下するのです。青海商事では、この問題について地元の漁協に相談し、安定調達の道を模索。その結果、チルド商品と冷凍商品を併用すれば、1年を通じて安定した調達が可能であるとの見通しを得ました。

量も価格も供給の安定性もクリアできるとなれば、残る課題はただ一つ。いかに利益を確保するかです。青森県産マダラは現在のロシア産より安い価格で調達できるとはいえ、数年前までの調達価格よりは高く、利幅の減少は避けられません。この点について青海商事では、販売拡大によって売り上げを増加させることで、利益の確保を目指せると判断。新たなチャレンジの第一歩として、本事業を活用した販促キャンペーンを企画しました。

地元スーパーでの販促キャンペーンで、65トンを完売

従来からニーズの高かったマダラに「青森県産」という価値がプラスされれば、これまで以上の売上げが期待できます。しかし、どれほど売り上げが伸びるのか?十分な利益が確保できるのか?という点は未知数です。そこで青海商事では、漁協から紹介された地元のスーパーマーケットにコンタクトし、期間限定での販促キャンペーンを提案しました。
商談は決して楽なものではなく、最初は否定的な反応も見られましたが、特別価格での提供などを条件に粘り強く交渉を進めた結果、最終的には2週間のキャンペーン開催が決定。本事業を活用して調達した65トンの青森県産マダラを15店舗で販売することとなりました。

タラの需要期は冬。それに対して今回のキャンペーンは初夏の開催であり、「この季節に、これだけの量を売り切れるのか?」という心配は最後まで残りました。しかし、蓋を開けてみると、その結果は驚くべきものでした。
オフシーズンかつ冷凍商品だったにも関わらず、用意した65トンの青森県産マダラは完売。
100グラムあたり110円(ロシア産は160円前後)というキャンペーン価格でも十分な利益を上げることができました。


青森県産マダラは消費者の反応も非常に良く、キャンペーン時に実施したアンケートでは、9割近いお客様が「商品に満足」しているほか、6割近くが「青森県産」という理由で購入しているとの回答が得られました。また、スーパーマーケット側もこの結果に大きな手ごたえを感じており、開催直後から、継続的なキャンペーン開催や通常価格での通年販売といった話が持ち上がっています。

キャンペーンでの出荷

本事業実施による成果

【調達した国産マダラを自社加工し販売】
新規販路である地元スーパーマーケットにて、昨年同量以上を販売

【販売先にて、国産マダラ切り身キャンペーンについての顧客アンケート調査を実施】
国産マダラの購入動機として「青森県産だから購入した」との回答が過半数であり、切り身商品に対する満足度は「満足」との回答が9割近くを占める結果となった。

青森県産マダラの供給量拡大に加え、他の魚種の国産化も構想

今回のキャンペーンは、青森県産マダラの可能性を大いに証明する結果に終わりました。この成果を受けて、キャンペーンを開催したスーパーマーケットでは、来たる冬シーズンに関してはロシア産マダラから青森県産マダラへの切り替えを決定。その他の販売事業者からも、引き合いの声が寄せられています。

青海商事では、そういった声に応えるべく、今後は三枚おろし器や急速冷凍器なども導入することで加工・供給能力を拡充する予定であり、
将来的にはマダラだけでなくホタテなどの魚種でも「青森県産」を前面に打ち出して販売拡大を図りたいと考えています。




本事業のポイント

“安心・安全・高品質な国産品”を消費者に届ける

本事業は、輸入マダラから国産品への切替を行い自社にて加工、地元スーパーマーケットで完売したことおよびアンケート結果でも高い評価を得たことで、今後の継続取引につながった事例です。原料としての“青森県産マダラの鮮度・品質の高さ”という魅力を起点に地産地消の体制構築を行い、販路の開拓および消費者ニーズに応える体制を構築できたことで、開拓した販路が今後も継続した事例と言えます。