お知らせ

事例10 大豆絞り設備の導入による輸入原材料使用量の削減

本事例は「食品原材料調達安定化対策事業(農林水産省)」によるものです。
同事業のその他の事例はこちらの一覧から閲覧できます。


有限会社おぐり(栃木県)

事業:豆腐関連商品の製造販売
従業員:143名
価格高騰の影響を受けていることが証明されている輸入原材料:大豆

大豆の価格高騰に、歩留まり改善で対抗

創業大正9年。有限会社おぐりは、栃木県で100年にわたって豆腐づくりを続けています。現在は4つの工場を持ち、同業メーカーのOEM生産やスーパーのPB商品の開発・製造などB to B分野を中心に事業を展開。特に油揚げや厚揚げなど揚げ物の品質においては業界内でも高い評価を得ています。

豆腐およびその関連商品は、100円以内のものが主流であり、おぐりのラインナップも6〜7割が低価格帯、残りの3〜4割が比較的高価格帯の商品となっています。

同社では、「価格ではなく品質で競う」という考えのもとで、新たな技術や商品の開発を積極的に追求しており、原料となる大豆に関しても、カナダの生産者に対して現地で豆腐作りのデモンストレーションを行うなどの努力を重ねることで良質な原材料調達を可能にし、こだわりの商品づくりを続けてきました。

しかし、近年、その輸入大豆の価格が高騰し、調達コストが約40%増加。さらにエネルギーコストの増加なども相まって収益性が著しく低下し、経営的に非常に厳しい状況を強いられています。

豆腐や油揚げなどの商品は、食品の価格が高騰している中、家計の味方としての需要が高い上、そもそもの販売単価が低いこともあり、商品単価の値上げは極めて難しいというのが実状。その一方、売上は安定的かつ微増しており、既存商品への支持は良好といえます。

このような状況を鑑みて、おぐりでは、「価格や品質を維持したまま製造コストを下げる」という方針で価格高騰への対応策を検討。その結果、製造コストの中でもっとも強く価格高騰の影響を受けている「原材料」に注目することが直接的かつ効果的な対策だと判断しました。

原材料におけるコスト削減を目指す上では、より安価な大豆に変更する、内容量を減らすといった選択肢も考えられますが、それでは大前提である品質維持が崩れてしまいます。そこで、おぐりでは過去の改善経験から「おからに残存している豆乳成分」に着目。大豆から可能な限り多くの豆乳を絞り切ることで、大豆の使用量を削減できると考えました。

豆乳の収量アップで、大豆の使用量と生産ラインの稼働時間を削減

大豆から豆乳を絞る際の歩留まりは、大豆を絞る装置の性能に大きく左右されます。おぐりでは、厚揚げや油揚げの生産ラインにおいて約30年前の装置を使用していたため、大豆60キロ当たりから採れる豆乳は約300キロ程度に留まり、おからの中には商品として十分に使える豆乳がまだ残っている状態でした。

同社では、検証の結果、より多くの豆乳を採ることのできる高効率な大豆絞り装置を導入することで歩留まりの向上を目指しました。

新たな装置は従来よりも高い圧力を加えて絞れるため、原材料からより多くの豆乳を得ることが可能となり、大豆60キロあたりの収量が約8%増加。歩留まりが向上すれば、当然、使用する原料は少ない量で済むため、年間では52,200キロの原材料使用量の削減が可能となり、現在の大豆価格で換算すると約800万円の削減効果が見込まれます。

また、この装置の導入によって1時間あたりの収量も増えたため、その後の工程も含めて生産ライン全体の稼働時間が減り、その分の人件費や電力消費量も減少。さらに、おからに含まれる水分有量も減ったことで、(おからの排出量は従来より10%削減され、50キロに減少)、廃棄処理の費用も削減されました。

本事業実施による成果

【高性能大豆絞り設備の導入による輸入大豆使用量の削減】
事業実施前 22,158kg/月 → 事業実施後 20,385kg/月(8%程度の使用量削減)

※大豆絞り装置の導入により豆乳の収量が向上し、おからの廃棄量も削減

品質と付加価値の向上により、高収益率商品の開発にも取り組む

おぐりでは、「生産の改善に終わりはない」としており、今後は生産性の向上によって得られた時間を用いて高品質・高付加価値・高収益率の商品を開発するとともに、高単価商品を扱う店舗等への販路拡大も進めていく予定です。

新装置を導入した油揚げ・厚揚げの生産ラインにおいては、豆腐質の含有率や皮の厚さなどを工夫することで、舌触り、食感、見た目、サイズ感など様々な観点から高品質かつお客様のニーズに合った商品開発を進める構想であり、将来的にはフライヤーや省力タイプの成型機などの設備投資も視野に入れています。




本事業のポイント

最適なロス削減のために、製造実績の分析と適切な投資判断が重要

本事業では、原材料価格の高騰への対応として、製造技術の改善や人的教育によるロス削減を進めていましたが、更なる削減のために燃料費や人件費に効く原材料の歩留まり向上に取り組みました。高効率な大豆絞り装置を導入することで、従来より多くの豆乳を採れるようになりました。設備導入への準備段階としてこちらの事業者では、大豆1俵から採れる豆乳の収量を計測・分析・評価を行い設備導入の効果を検証しています。効果的な歩留まり改善を進める際には、理論上の目標値をいかに設定するか、が重要です。そのためにも、製造実績データの分析を行い、投資判断を適切に行うことが重要です。