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事例8 冷却設備導入による廃棄ロス削減及びコストダウンの実現

本事例は「食品原材料調達安定化対策事業(農林水産省)」によるものです。
同事業のその他の事例はこちらの一覧から閲覧できます。


株式会社魚宗フーズ(岡山県)

事業:スーパーマーケット・病院・宅配業者へ弁当・惣菜類の製造販売
従業員:330名
価格高騰の影響を受けていることが証明されている輸入原材料:牛肉・鶏肉

見込み生産の弱点が、価格高騰対策の切り札に

岡山県を拠点に、寿司や惣菜、弁当などの製造・販売を手掛ける魚宗フーズ株式会社。中国・四国地方および近畿地方を商圏に、スーパーマーケット、病院、宅配サービス事業者などに商品を提供するほか、食品製造のノウハウを生かして社員食堂や飲食店の経営も行っています。

握り寿司や巻き寿司に用いる海産物、弁当用の肉類など、魚宗フーズでは多くの製品に輸入食材を使用しています。しかし、ウクライナ情勢などの影響でそれらの価格や光熱費が上昇。さらに最低賃金の引き上げによる人件費の増加なども加わり、ここ数年、同社は経営的に厳しい局面を強いられています。

このような状況に対応すべく、魚宗フーズでは様々な角度からコスト削減策を検討。その中で、もっとも効果的な施策として「廃棄ロス」の削減に焦点を当てました。

魚宗フーズでは、過去の実績値などを参考に見込み生産を行っていたため余剰品の発生が避けられず、廃棄物の総量は1日あたり約500kgに及んでいました。

同社では、この問題への対策として、まず受注・製造フローの改善に着手。見込み生産をやめ、受注確定後に製造を始める方式へと変更することで余剰生産の抑制を目指しました。

しかし、実際に試行してみると、米の炊き上がり量などを厳密にコントロールすることが難しく、日によっては仕込み不足が発生。さらに、不足分を補うために改めて仕込みをしたことで工数(=人件費)が上昇するといった問題も浮上。結果的に受注・生産フローの見直しは断念せざるを得ませんでした。

受注生産が不可能となれば、従来と同じく見込み生産を続けなければなりません。そして、見込み生産を続ける以上、余剰商品の発生は避けられません。

魚宗フーズでは、あらためて対策を練る中で廃棄ロスの“内容”に視点を転換。廃棄物の中には、仕込み品や完成品などが多く含まれていることに着目しました。余剰となった仕込み品や完成品は、当然、味も品質も出荷品と同等です。にもかかわらず、賞味期限の都合で廃棄処分されていました。その量は、1日あたり数百キロ。

同社では、そのような「食べられるのに捨てられているもの」を有効活用できれば、廃棄ロスの軽減だけでなく売上アップにもつなげられると考え、冷凍食品としての販売を計画しました。

真空冷却器の導入により、大量かつ高効率な冷凍食品生産が可能に

1日に数百キロもの量を冷凍するには、相応のキャパシティを持った冷却器が必要となります。また、弁当などの加熱調理済み商品は、菌の増殖を抑えるという観点から、短時間で急速に冷凍する必要があります。しかし、同社が保有する冷却器は設備が古い上、キャパシティ的にも通常の生産だけで手いっぱい。冷凍食品の生産に対応できるだけの能力がありませんでした。

そこで魚宗フーズでは、本事業を活用して新たに真空冷却器を導入。冷凍食品事業本格化への第一歩を踏み出しました。

今回導入した真空冷却器は、食品を減圧状態に置くことで食品内部に含まれる水分を蒸発させ、その際の蒸発熱によって冷却を行います。食品の中心までムラなく一気に冷却が進むため、品質の低下や菌の増殖を抑えるという面でも効果が期待できます。

魚宗フーズでは、導入後まもなく本格稼働をスタート。効果はすぐに表れ、冷凍に要する時間が従来の三分の一に短縮されたほか、食味の点でも良好な結果を得られました。

廃棄量に関しても、米飯だけで1日に約200キロのロスが削減。その他の食材も大幅にロス減ったことで、廃棄に費やす総コストは年間で約180万円の削減となりました。

本事業実施による成果

【真空冷却器の導入による食材廃棄ロスの削減】
事業実施前の廃棄量 500kg/日
事業実施後の廃棄量 292kg/日(40%程度の廃棄ロス削減)

【廃棄ロスの削減による廃棄コストダウン】
事業実施後のコストダウン 1,800,000円(年間想定)
※製造計画に基づく算出値

【従来では廃棄されていた食材を活用した新商品開発】
余剰となった酢飯を導入設備で冷凍、これらを“冷凍寿司”を製造・販売

商品リリース直後から、手ごたえを実感

魚宗フーズでは、冷凍食品事業の本格化第一弾として巻き寿司や魚を使った惣菜を商品化。従来品を冷凍させるだけでなく、冷凍用のレシピ開発も並行して行い、味や食感などを最適化した上で、すでに市場投入を開始しています。

2024年1月に発売となった冷凍商品は、取引先の評価も高く、機器導入の翌月には大手宅配サービス事業者のカタログ掲載が決定。順調に売り上げを伸ばしているほか、購入者の評判も良く、早くも定番メニュー化の話が持ち上がっています。
魚宗フーズでは、さらなる事業拡大を見据え、冷凍用オリジナル弁当の開発、地元食材を使った付加価値の向上といった取り組みも進めることで、中国・四国地方および近畿地方のみならず、いずれは全国規模での展開も目指しています。




本事業のポイント

より効果的な設備導入に向けた改善効果の分析・試算

本事業は、食材の廃棄ロス削減を目的に、従来廃棄されていた食材を用いた新商品開発を行うために真空冷却器を導入しました。また、冷却設備の性能向上により過冷却等のムラ抑制による品質向上も実現しています。設備選定の際には生産性だけでなく品質向上も見据えて検討を行いました。単工程改善の場合、設備導入・稼働を目標とするのではなく、導入前後で生産性や品質などの生産管理指標がどのように変化するのかを比較検討できるようにしておくことが重要です。