お知らせ

事例7 オーブン設備等の導入による輸入原材料の使用量抑制

本事例は「食品原材料調達安定化対策事業(農林水産省)」によるものです。
同事業のその他の事例はこちらの一覧から閲覧できます。


南光物産株式会社(大分県)

事業:菓子類の製造・販売
従業員:29名
価格高騰の影響を受けていることが証明されている輸入原材料:小麦

南光物産

コロナ禍からの回復途上で、原材料や資材の高騰に直面

南光物産株式会社は、日本有数の温泉地である大分県別府市で、ざぼん、ゆず、かぼすなど地元素材を生かしたお菓子を半世紀以上にわたって作り続けています。商品ラインナップは、伝統銘菓「ざぼん漬」を筆頭に約250アイテム。伝統を守りつつ、新商品の開発にも積極的に取り組んでいます。

同社の主力商品は、大分県産のゆずジャムをブッセ生地で挟んだ「ゆず一番」。年間58万個を売り上げるこの商品は、数年にわたってコロナ禍の影響を受けたものの、2023年春頃からは観光ニーズの高まりとともに再び販売数を伸ばし始めています。しかしその一方で、生地に小麦(年間3.9トン)を使用しているため、昨今の小麦価格上昇の影響を受けて原材料費が増加。以前と同等の利益率を維持することが難しい状況も生まれています。

南光物産では、このような状況に対応するため「ゆず一番」の生産工程の見直しを計画。「歩留まり率の向上(良品率の向上)」と「生産スピードの向上」によって、小麦の使用量抑制と増加する観光ニーズへの対応を図ることにしました。

製造ラインのボトルネックを解消し、工程全体のパフォーマンスを向上

「ゆず一番」の製造工程の改善は、ブッセの生地を焼く工程を中心に検討が進められました。

焼き工程で使用しているオーブンは導入から18年が経過し、焼きムラや様々な不具合が発生。1時間あたり約2,240枚の生産数に対して、約1%が不良品として廃棄となり、約18%強は非良品として店頭での試食などに使用され、最終的に商品として販売されるのは全生産数の80%ほどに留まっていました。また、スタッフがオーブンの状態を常に注視し、焼け具合の確認や火加減の調整をしなければならなかったほか、良品・非良品・不良品を目視で仕分ける作業も生産スピードを低下させる一因となっていました。

南光物産では、こういった問題を解決するため、本事業を活用して「次世代オーブン」への切り替えを実施。さらに、手作業で行っていたジャムの注入を自動化させる「充填機」の導入や「個包装機」の更新も行うことで、生産ライン全体のパフォーマンス向上を目指しました。


導入効果としては、オーブンの焼成室が2段から3段に増えたことで1時間あたりの生産数が1.5倍に増加。焼きムラに関しても大幅に減少が見られ、不良品がほぼゼロになったほか、非良品の発生率も2〜3%となり、結果として良品率は97〜98%まで向上しました。また、焼成工程に続く「充填工程」および「個包装工程」の生産能力も大きく向上したため、従来の1.5倍のスピードで生地が焼きあがっても滞りなく製品を仕上げられる体制が整いました。さらに原材料コストの削減に関しても、商品対象外となっていた年間約7,000個の不良品がほぼゼロになることで、小麦の使用量が年間で約47キロが削減可能となる見込みです。

本事業実施による成果

【パワーオーブン設備導入による原材料の歩留向上】
事業実施前の非良品・廃棄量 759kg/年
事業実施後の非良品・廃棄量 20㎏/年(年間想定廃棄量)※

【自動充填設備・包装設備の導入による生産能力増強】
事業実施前の生産量 3.9t/年
事業実施後の生産量 5.8t/年(年間想定生産量)※

※製造計画に基づく算出値

さらなる増産を視野に、原材料の削減と品質向上の両立に挑む

南光物産では、機器の調整等によってさらなる生産能力向上を進めることで、コロナ禍以前を上回るレベルまで増産を図る予定。将来的には年間生産数87万個、1,400万の売り上げアップを目指しています。
また、新たなオーブンは生地がよく膨らむため、より少ない原材料で従来と同等のボリュームを出すことが可能であり、この利点を生かして、よりいっそうの小麦使用量削減や品質向上を推進し、「安全で美味しい最高品質のお菓子をお届けする」という使命を追求していきます。




本事業のポイント

良品・不良品の定義を明確にすることで最適な改善の実現に繋がる

本事業では、原材料使用量の抑制を狙った原材料の歩留向上のため、パワーオーブンをはじめとした設備を導入しました。この設備導入により、非良品・廃棄対象となる商品の大幅な削減を実現。こちらの事業者では従来より焼成工程における商品の出来を区分(優良品・非良品・不良品)していました。区分の定義が明確化されたことで不良品が多いことが判明、焼成工程が歩留まりの改善対象であるという結論を導き出しました。この“良品・不良品の定義の明確化”が、適切な設備仕様の検討や設備導入に寄与しより大きな改善効果の発現に繋がると言えます。