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事例6 循環型冷却器導入による輸入原材料使用量の削減

本事例は「食品原材料調達安定化対策事業(農林水産省)」によるものです。
同事業のその他の事例はこちらの一覧から閲覧できます。


株式会社村田実商店(山口県)

事業:水産食料品(練り製品)の製造・販売
業員:59名
価格高騰の影響を受けていることが証明されている輸入原材料:たら類

村田実商店

工場内のロス削減で、原材料高騰に対抗

山口県・下関で創業から70年、株式会社村田実商店は、新鮮な海の幸を材料にかまぼこやちくわといった練り製品の製造・販売を行っています。近年では、フグを使った「ふぐ入り蒲鉾」や「ふくしゅうまい」など新たな名産品も開発。熟練の技から生まれる製品は、現在、主に九州や中国・四国地方を中心に出荷されています。

消費者の「本物志向」を追い風に、ここ数年で首都圏の高級スーパーなどからの引き合いが増加する一方、同社では製造・販売の現場において様々な課題に直面していました。

設備の老朽化、少子化による人材不足、食品ロスや環境への対策。なかでも主原料である海外産のスケソウダラの価格高騰の影響は大きく、数年間で3割以上も値上がりしたことで経営を圧迫するほどの事態となりました。

このような事態を受けて村田実商店では対応策を検討。価格転嫁や安価な原材料への変更は市場の状況や「現在の品質を維持することが、商品を購入頂いているお客様への誠意」として、適切でないと判断し、自社内の努力によって「ムダを削減し、生産コストを抑制する」という道を選びました。

生産コスト抑制に向けて最初に取り組んだのは、受注予測の精度向上です。しかし、販売先の諸事情によりイレギュラーな発注が必ず発生するため、あらかじめ生産数を絞っても一定量のロスは避けられず、十分な効果が得られませんでした。
そこで同社では、あらためて「材料や製品の冷却」という点に着目。高機能な冷却機器を導入することで、原材料のムダ削減や賞味期限切れによる廃棄ロス削減を推進し、生産コストの抑制を目指すことにしました。

新たな冷却機により、原材料使用量の削減と賞味期限の長期化を目指す

かまぼこの冷却には、冷蔵庫の保存や出荷場の温度管理など複数のポイントがありますが、村田実商店では、焼き上がったかまぼこを冷やす工程がもっとも改善効果が高いと推測。本事業を活用して、循環式冷却機を2つの生産ラインに各1台導入しました。

従来の設備は強い冷気を当てて冷却する方式だったため、原材料から1〜4グラムの水分蒸発が発生。そのため内容量100グラムの製品であれば、水分の蒸発を考慮して104グラムの原料で製造していました。しかし、新たに導入した循環式冷却機は、弱い冷風を当てて冷却するため、商品からの水分蒸発量が比較的少なく、原材料の目減り量を抑制。101グラム程度での原料でも製品の内容量を維持できるようになり、その結果、2%程度の原材料使用量削減が可能になりました。

また、従来の冷却機は霜の付着によって熱交換率や風力の低下が発生していましたが、新たな冷却機は水分の蒸発が抑えられる分、霜の付着も発生しづらく、より少ない電力での運用が可能。実際、この冷却機の導入と生産性向上の取り組みなどの結果、電力消費量は前年の同時期と比べて約半分となりました。


賞味期限の延長に関しては、製品の中心温度を10℃まで下げることで菌の発生が抑制され、工場内の使用期限を+2日間、賞味期限を+3日間、合計5日間のロングライフ化が実現できる見通しです。

今回の機器導入は、廃棄ロス削減という効果も生んでいます。以前は、注文を受けてからの生産では間に合わず、見込み生産を行っていましたが、欠品防止の観点から生産量に余裕を持たせており、それが工場内での廃棄ロスにつながっていました。しかし、新たな冷却機によって賞味期限の延長が可能になったことで、この問題が解決。廃棄ロスを約17%削減することができました。

廃棄ロスを削減

本事業実施による成果

【新循環型冷却設備の導入による輸入原材料の使用量の削減】
設備導入前 479トン/年 → 設備導入後 469トン/年(2%程度の使用量削減)※

【新循環型冷却設備の導入による輸入原材料の廃棄量(2か月間)の削減】
設備導入前 606kg → 設備導入後 503kg

【新循環型冷却設備の導入による製品の一般生菌数の抑制】
設備導入前 2.6×104個/g → 設備導入後 1.0×103個/g

※製造計画に基づく算出値

長距離輸送が可能になり、首都圏へと販路を拡大

商品がロングライフ化することで商品の長距離輸送も可能になるため、村田実商店では、今後、首都圏のスーパーを中心に販売チャネルの拡大に取り組む予定です。「下関」というネームバリューに加え、安全・安心や環境への配慮などの付加価値訴求も強化しつつ、従来よりも高価格の製品展開や定番商品としての受注を目指しています。

また、同じくロングライフ化のメリットを生かし、インターネット通販の売り上げ拡大も試行しており、贈答用やお取り寄せニーズの獲得に期待を寄せています。




本事業のポイント

原材料・製品のロングライフ化の重要性

本事業では、ロス削減を目的に、賞味期限を延長するために循環型冷却設備の導入を行いました。原材料価格の高騰に対し、値上げをすることを選ばすに自社のロス削減に着目しています。今回の設備導入によって得られる効果として“賞味期限の延長“はロス・コスト削減だけでなく、従来より遠方への配送が可能になるという点で販路拡大にも寄与しています。この点より、製品や原材料のロングライフ化は製販の双方に影響をもたらすことから、より大きな成果の創出に繋がる打ち手であると考えています。