お知らせ

事例1 国産菜種を原料にした家庭用食用菜種油の生産量拡大

本事例は「食品原材料調達安定化対策事業(農林水産省)」によるものです。
同事業のその他の事例はこちらの一覧から閲覧できます。


岡村製油株式会社(大阪府)

事業:各種油脂、油粕、肥料及び飼料の製造
従業員:124名
価格高騰の影響を受けていることが証明されている輸入原材料:なたね

岡村精油

安全・安心な製品を、安定的に供給するために

大阪・河内地方で創業から130年にわたって食用油づくりを続けてきた岡村製油。綿実やコーン、菜種などを原料として長年の経験と技術から生み出される製品は、高級料亭や一流レストランからも高い評価を得ています。

岡村製油では、食の安心・安全に対するニーズを背景に、以前からオーストラリア産の原料を用いて「NON GMO(非遺伝子組み換え)菜種油」を製造してきました。しかし、消費者庁の表示基準が変更となったため、従来製品に「NON GMO」と表記することが不可能に。さらに、天候不順によるカナダ産菜種の不作、ウクライナ紛争による供給不安低化や価格高騰も発生。そこで同社では、非遺伝子組み換え原料を安定的に確保するために、国産菜種への切り替えを決意しました。

国産菜種は国からの補助を追い風に生産が増産しており、岡村製油ではその流れを拡大すべく、北海道の生産者に対して積極的なアプローチを実施。時には販売事業者とともに産地を訪れ、国産菜種油に対するニーズが高まっている状況を伝えつつ、「増産した分は、自分たちが継続的に購入する」といった提案や播種前契約を行うことで、事業規模に見合った菜種の調達を可能にしました。

新たな充填機で生産量を向上させ、国産菜種油の販売拡大へ

国産菜種の調達ルートを構築すると同時に、岡村製油では拡大する市場ニーズに対応するための製造・販売体制の整備にも着手。本事業を活用して「生産力の向上」および「安心・安全の訴求力向上」に取り組むこととなりました。

生産量の向上に関しては、搾った油をペットボトルや缶に注入する自動充填設備を導入。従来の設備は、充填精度が低いために不良率が高く、また手作業工程があるために速度も遅く、搾油のキャパシティに充填が追いつかないという状況が生まれていましたが、新たな充填設備によって生産能力が2.5倍以上にアップしたほか、自動化によりオペレーションの手間も軽減。現在は1日に5,000本の生産を目指してさらなる効率化を進めています。

安心・安全の訴求に関しては、市場の動向からメインターゲットを30〜40歳代の主婦に設定し、北海道産の原料を使用していることを明記したラベルを開発。子育て世代に対して安心・安全な製品であることを積極的にアピールしています。

今後は、精製工程で化学薬品の使用を削減していることや、トランス脂肪酸の低減なども表記することで60〜70歳代の健康ニーズなども取り込み、新規ユーザーの拡大を目指す計画です。

本事業実施による成果

【半自動充填設備の導入による生産量拡大】
事業実施前の生産量 0.9t/日 → 事業実施後の生産量 3.0t/日

【国産原材料の使用量】
国産菜種の使用量 396t 増加 (24年1月〜24年12月の使用予定量)

※製造計画に基づく算出値

完全国産化を目指し、生産者とのパートナーシップを強化

岡村製油では現在、オーストラリア産と北海道産の菜種を併用しています。しかし、本事業によって生産のキャパシティが拡大したことや、市場ニーズに対する手ごたえを得たことなどから、菜種油の原料を将来的にすべて国産に切り替えたいとのこと。

この計画を進めるには国産菜種の増産が不可欠ですが、その点に関しては、当初から取り組んでいた「生産者との関係づくり」を北海道のみならず本州においても展開することで、生産者の理解を促し、国産菜種の増産と安定的な製品供給を実現したいと考えています。




本事業のポイント

原材料国産化の為には、消費者のニーズの把握・原材料の調達ルートの確保が重要

本事業では、菜種油の完全国産化を実現しました。この実現のキーとなるのは、国産原材料が持つ「安心・安全」という消費者ニーズを満たすイメージと、原材料の調達ルートの確保(播種前契約)の2点です。昨今、食の安心・安全への意識が高まっており、「値段の安さだけでなく、国産品を買いたい」という声が少なくありません。こうしたニーズに応えるために必須となる“原材料の安定的な供給”については、国産菜種生産者との播種前契約を進める事でその実現まで漕ぎつけました。

国産原材料の持つ「安心・安全」というイメージを最大に引き出すためにも、安定的・持続的な調達という供給体制を契約面から整備することが重要と言えます。